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2011/02/02(水)

【#82】最大公約数

 いやー、巷では「佑ちゃんフィーバー」が止まらないですね~。自主トレ最後の頃はちょっと落ち着いてきたかなーと思ったら、キャンプインと同時に再燃!って感じですしね(^^;)。ずーっと前、斎藤佑樹投手が「ハンカチ王子」と呼ばれてた頃、このコラムでちょっとだけ触れた事があったんですが、その時はまさか、将来彼がファイターズに入ってこんな騒ぎになるとは想像すらしてなかったです(笑)。
 「今年はB・Bも大変でしょー?」ってよく聞かれるんですが…正直言って、今んとこ全っ然影響ないですね(笑)。まぁ自主トレ期間も含めて、今の時期選手はほとんどこっち(北海道)にはいませんから、仕方ないと言えば仕方ないんですが…。選手がキャンプを終えて北海道に戻って来る日を楽しみに、僕はあくまで例年通り(と言うか例年以上に?)地味~に地道にオフの活動を続けておりますですよ、ハイ(笑)。
 ――とまぁそんな訳で、僕がこの佑ちゃんフィーバーを見てる目はまだ「傍観者」の域を出てないんですが、鎌ケ谷や名護で繰り広げられている喧騒をニュース等で見ながら思うところは多々ありますんで、今回はその辺についてお話ししたいと思います――。

 球団には、毎日いろんな方から電話やメール、手紙やFAXなどでメッセージが届きます。励ましの言葉、感謝の言葉…その内容は様々ですけど、時にはお叱りの言葉をいただく事もあって、そんな時僕らはプロ野球球団の一員として、常に多くの人に見られてるんだな…と、身が引き締まる思いがします。
 僕宛にも、多くのメッセージをいただきます。僕に対しても同様に、お叱りの言葉をいただく事はありますね。もちろん大半の場合は、貴重なご意見として反省材料にさせていただいてます。そこのところは本当に真摯に臨みたいと思ってますんで、それをご理解いただいた上でこの後を読んでくださいね。
 さて、僕宛にいただくお叱りの言葉なんですが――その中には、残念ながらかなりの誤解を含んだケースもなくはないんです。特に最近目立つのは「B・Bにサインをお願いしたのに、もらえなかった!」という苦言ですね。多くの場合は、サインをもらえなかった子供の親御さんからのご意見です。
 サイン対応の難しさについては、以前もここで書いた事があります(#20「サインの価値」参照)。僕はそこでも述べた通り、いろんな事情といろんな考えがあって自分なりの決め事を作り、それに従って対応している訳なんですが、当然ながら世の中全ての人がこのコラムを読んでいる訳ではありませんから――と言うより、コラムの存在自体知らない人の方が多いでしょうから――、その場合先方はこちらの事情なんて知る由もない訳です。だからお叱りをいただく事自体について、僕は相手の方を責めるつもりはありません。事実とは違った批判を受けたのであれば、あまり気にせず受け流せばいいのもわかってはいます。ただ、こちらの思いや事情を理解してもらえずに、単に驕った気持ちでファンサービスを怠っているように捉えられてしまうのはとっても残念だし、正直言って苦い思いが残るのも事実です。サインの場合なんかは特に、そもそもはファンの為に良かれと思って始めた事が、結果的にはその好意がアダとなる場合も往々にしてありますしね…。

 まぁサインの件はあくまで一例で、僕がここで言いたいのはその事ではありません。

 誰だって、嫌な気持ちになんてなりたくはないはず。もしこういったクレームを避ける事だけが目的であるのなら、一番簡単で有効な方法がひとつだけあります。それは、「何もしない」という事。最初から「サインは一切しません」、ひいては「ファンとのふれ合いは行いません」と予防線をガッチリ張ってしまえば、混乱やトラブルを招く可能性は防げるでしょう。ただ僕は、安易にこういう発想に走る事にはすごく抵抗があるんです。プレーに集中すべき選手ならともかく、ファンサービスが一番の身上であるマスコットとして、「公平性」「危険性」の名の下に無難な選択肢を選ぶクセがついてしまうと、ファンとの距離がどんどん遠くなっていってしまうんじゃないか、って――。

 マスコットをやってると、球場には本っっっ当にいろんな人がいるなぁ…ってしみじみ思うんですよね。おそらく皆さんが普段の社会生活で知り得るより、何倍もの多種多様な人と僕らは毎日ふれ合っている事になると思います。十人十色と言うけれど、一見ごく普通の人達であっても、それぞれがいろんな性格を持ち、そして各々の信条や常識というものがある。そんな様々な背景を持った人達が多くなればなるほど、僕達の対応は一筋縄ではいかなくなってくるんです。
 …というのはちょっと大げさですけど、サインのケースに限らず、いろんな人のいろんな要望が出てくるようになると、現実問題全てに対処するのは困難になってきます。僕も長い間、沢山の人に出来るだけ満足してもらえる方法を模索しながら今に至ってますけど、そこで行き着いた答は、結局のところ全ての人に完璧に納得してもらえる方法なんてあり得ない、という事。残念ながら、これは確固たる事実です。ただ、だからと言ってその「模索」をやめたくはない。そんなジレンマの中で行き着く先が、「最大公約数」という言葉なんです。
 最大公約数――誰もが数学で一度は習った事のある言葉だとは思うんですが、ここでは「いろんな事情や要望を持った人に、出来るだけ共通して納得してもらえる方法」という意味で使ってます。全ての人に完璧に満足してもらえる方法がない以上、僕らが出来る最大限の事は、一人でも多くの人に納得してもらえる「最大公約数」を探すこと――これしかないんです。
 ただ、そこはあくまで「最大公約数」ですから、中には満たされない人だって当然出てくる。そんな人達からあまりにも強い反感をぶつけられる事が繰り返されるようになると、最初から「じゃあやめとこうか…」って消極的な発想に流れかねないんです。きっとそんな繰り返しから、お互いの「距離」って離れていってしまうものなんじゃないのかなぁ…なんて考えてしまう事が、最近時々あるんですよ。

 「佑ちゃんフィーバー」の話題から始まって、だいぶ話が飛躍しちゃいましたね(^^;)。だけど、球場にファンが殺到していろんな制約が発生している現状を見て、こんな事を連想したのは事実です。佑ちゃん人気に乗っかってファンが増えるのは、もちろん非常に喜ばしいこと。ただ、ファンが増えれば増えるほど制約も多くなり、満たされない人も増えてくるでしょう。そんな時、どうかファンの皆さんにはこの「最大公約数」って言葉を心の片隅に留めておいてほしいな…と、連日繰り返されるニュース映像を見ながら物思う、今日この頃なのでした。

 さて――次回のコラムでは、皆さんにある重要なお知らせがあります。どんなお知らせかは…今はまだ言えませんので(^^;)、次回までしばしお待ち下さい!